病院を取り巻く環境

 

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1、病院数は漸減傾向続く

 病院を取り巻く環境は、年々厳しさを増しています。

診療報酬の改定(引き下げ)、医師・看護師不足の深刻化、医療の高度化・複雑化、患者の選択意識の高まり(大病院への集中)などが主因と考えられる。

 病院数は1990年の10,096施設をピークに漸減傾向が続いており、2009年6月末では8,749と実にピークから13%強の減少となっています。当然のことだが、病床数も減少傾向が続いており、1997年3月末の166万3286床から2009年6月末で160万4443床となっています。

 2006年以降は新規開業数も廃業数も減少しており、既存病院の廃業あるいは診療所への転向のみが進んだ格好となっている。


 

 一方、医科(一般)診療所数も2006年以降伸び悩んでいる。

 病院勤務医の開業医志向が高まっているなら、診療所数それ自体も増加が続くはずだが、新規開業数、診療所数とも停滞している。一般診療所の伸び率は年々下がり、病院勤務医の開業医志向は見られないとも言える。

 都道府県別の診療所数を平成10年(1998年)と平成20年(2008年)で比較してみると、青森県が平成10年:971→平成20年:939(▲3.3%)、山口県が平成10年:1,328→平成20年:1,296(▲2.4%)と2県のみが減少しているが、平成20年の1年間の診療所数の増減を調べると、減少は首都圏の千葉県、東京都を含む23都県にまで拡大している。(厚生労働省「医療施設動態調査」より)

 実際に、勤務先別の医療施設従事医師数をみると、診療所は医師の絶対数こそ増加しているが、その割合は90年代の33%~36%の範囲で推移している。しかも、診療所の医師は2006年時点で50~59歳:30.1%、60~69歳:15.2%、70歳以上が22.8%と、50歳以上が実に68.1%も占める。こうした状況を勘案すると、早晩、診療所数・医師数ともピークアウトする可能性を否定できない。

 

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2、厳しい病院経営、自治体病院の黒字は4分1にとどまる

 また、厚生労働省医局政局が発表した「平成19年度 病院経営管理指標」によると、一般病院における経常利益が黒字病院の比率は、医療法人で71.6%となっているが、自治体病院に至っては4分の1にとどまっている状況だ。
しかも、医療法人立病院においても、医業利益率の低下等から年々、赤字の比率が上昇傾向にあるのが実情だ。


 一般病院において、主な経営の管理指標をみてみると、公民の差は歴然としている。
医業利益率は、医療法人立病院が2.0%とプラスであるのに対し、公的病院は自治体病院が▲14.6%、社会保険関係団体病院が▲1.3%、その他公的病院が▲2.1%といずれもマイナスで、なかでも自治体病院のマイナス幅が大きい。人件費比率については、自治体病院は63.6%と他の病院比べると10ポイントも高い。また、総資本回転率、固定資産回転率をみても自治体病院の低さが際立っているほか、は、1床当り固定資産額についても自治体病院の高さが顕著だ。機能性の項では、入院、外来とも医療法人が高く、医業収益の差に繋がっている。

一般病院における公民比較
病 院 数 医療法人 自治体 社会保険
関係団体
その他
公的
232 251 37 151
平 均 病 床 数
135
295
317
386
収性益
医業利益率 2.0 -14.6 -1.3 -2.1
総資本医業利益率 2.0 -7.4 -1.8 -1.2
経常利益率 2.5 -7.4 -0.6 -1.8
人件費比率給与費/医業収益 52.7 63.6 53.0 52.7
人件費比率(委託費含む) 58.6 73.2 60.3 59.0
物件費比率 34.2 34.8 34.2 36.3
病床利用率 77.8 72.6 73.4 77.8
総資本回転率 123.1 76.6 136.1 86.4
固定資産回転率 231.7 104.0 408.5 137.1
職員1人当たり医業収益 千円 12,144 12,721 13,905 14,052
職員1人当たり人件費 千円 6,277 7,761 7,281 7,208
安全性 自己資本比率 37.5 69.7 23.1 23.3
固定長期適合率 86.4 89.4 58.1 95.5
借入金比率 37.2 21.1 14.4 47.3
流動比率 349.5 480.6 390.4 244.2
1床当り固定資産額 千円 12,132 24,018 11,747 18,315
機能性 平均在院日数 25.6 21.0 17.1 18.8
外来/入院比 2.6 2.1 2.0 1.9
1床当り1日平均入院患者数 0.8 0.7 0.7 0.8
1床当り1日平均外来患者数 1.7 1.4 1.4 1.4
患者1人当り入院収益 千円 37.0 35.5 41.0 40.6
外来患者1人1日当り外来収益 千円 11.7 10.6 12.2 12.1
医師1人当り入院患者数 6.8 6.0 4.8 5.5
医師1人当り外来患者数 13.3 12.3 9.6 10.3
看護師1人当り入院患者数 1.3 1.1 1.0 1.1
看護師1人当り外来患者数 2.8 2.3 2.0 2.1
職員1人当り入院患者数 0.6 0.6 0.5 0.6
職員1人当り外来患者数 1.2 1.2 1.0 1.1

(出所)「平成19年度 病院経営管理指標」(厚生労働省)

3、病院の倒産は今や珍しくない


 医療機関の廃業が相次ぐ中で、医療機関(病院・診療所・歯科医院)の倒産件数も、2002年以降増加傾向にあり、2006年度以降は年間40件で高止まりしている。
  病院の倒産件数は2006 年度(12 件)をピークに減少傾向をみせている。しかし、帝国データバンクでは「今後は、2008 年3 月期分から医療法人の決算書が閲覧可能(医療法人制度の改革に伴う)になったことを受け、これまで臨床技術・施設面に重点が置かれていた病院の選択要素に「財務面」が加わることとなり、現場と経営の両輪が安定した病院志向の高まりから、経営難が周知された病院の淘汰が将来的に表面化する可能性もある」と分析をしている。

主な病院の倒産(2001年度~2008年度)
商号
負債(百万円)
倒産態様
倒産年度
所在地
施設形態
(医)育和会 20,000
民事再生法
2002
大阪府
病院
浪速医療生活協同組合 13,400
民事再生法
2005
大阪府
病院
(医社)医新会 7,000
民事再生法
2003
北海道
病院
(医財)桜会 4,359
民事再生法
2008
東京都
病院
加藤総合病院 4,325
破産
2006
大阪府
病院
(医社)五輪橋内科医院 4,100
民事再生法
2006
北海道
病院
(医)輪林会 4,036
破産
2004
北海道
病院
(医)大淀会 4,000
破産
2007
鳥取県
病院
(医)三緑会 3,436
民事再生法
2007
栃木県
病院
(医)陸会 3,300
民事再生法
2007
大阪府
病院
(医社)善衆会 3,200
民事再生法
2006
群馬県
病院
(医財)交道会しもべ病院 3,000
民事再生法
2006
山梨県
病院
(医)鋠生会 2,600
破産
2008
大阪府
病院
(医社)寿光会 2,500
民事再生法
2004
東京都
病院
(医社)松嶺会 2,500
民事再生法
2003
群馬県
病院
糸魚川医療生活協同組合 2,444
破産
2007
新潟県
病院
(医社)上人会 2,268
民事再生法
2007
大分県
病院
(医社)三楡会北斗循環器病院 2,000
民事再生法
2005
北海道
病院
(医)凰林中央会 1,933
民事再生法
2007
大阪府
診療所
(医)廣瀬病院 1,900
民事再生法
2006
埼玉県
病院
(医社)同仁会 1,880
民事再生法
2006
滋賀県
病院
村上病院 1,800
民事再生法
2004
静岡県
病院
(医社)正朋会 1,750
民事再生法
2006
千葉県
病院
(医)メディケアアライアンス 1,750
民事再生法
2004
大分県
診療所
(医)燿生会 1,600
民事再生法
2003
栃木県
病院
(医)竜王会 1,600
民事再生法
2008
京都府
病院
順生会病院 1,500
破産
2008
埼玉県
病院
小倉メディカルオフィス 1,500
破産
2007
愛知県
診療所

(出所)帝国データバンク

4、医師不足は産婦人科、小児科から外科へと広がる

 医師不足と言われて久しい。厚生労働省の調査によると、平成18年までの10年で医師総数は約15%増の26万3540人となっているが、産婦人科(産科、婦人科を含む)、小児科は医師不足は深刻なうえ、ここ数年、“花形”ともいえる外科医の減少が目立っている。 
  外科医の中でも29歳以下の若手医師数をみると、16年の医師数は2184人で、8年の調査に比べて1000人以上も減少している。若手の「外科離れ」が目立っている。

 

 

<医師不足で診療休止に追い込まれた例>
 2008年7月7日、銚子市の岡野市長は、9月末での銚子市立総合病院の診療休止を表明した。
 2006年度まで35人前後で推移した常勤医師数は、07年4月に22人まで急減した。
研修先を自由に選べる新臨床研修制度の影響で、医局のスタッフが不足した日大が、派遣していた医師を引き揚げたからだ。
 「医師1人で年間1億円稼ぐ」と言われるように、07年度の医業収益は前年度より9億1800万円も減った。
一方、医業収益に対する職員給与費の割合(人件費比率)は、適正とされる「55%以内」を上回り、05年度以降は70%を超えている。
医者不足で患者が減り、経営難に陥いり、市の財政難から病院休止に追い込まれた典型的な例です。

 医師不足数は、厚生労働省が2006年に1.2万人(「診療」に週40時間必要だとし、その必要医師数と現状の医師数(2004年)の差としている、
前提条件が異なるなるため、単純比較はできないが、今年8月に日本経済研究センターによる医師不足数は、これまでの予測数値としては一番多い。
 医師不足を解消するために、今後10年かけて医学部の定員数を現在の1.5倍に拡大するとの政府方針に沿い、将来の医師数を推計した。試算は現在でも全国で7.2万人の医師不足が生じていると指摘。医学部定員を増やしても医師として仕事をするには8年かかるため、医師の不足数はピーク時の15年に7.8万人に達すると予測している。
いずれにしても、病院経営において医師の確保は喫緊の課題であり、なかなか解決できない問題である。

医師不足数
試算機関
不足数
定義
厚生労働省(2006年
1.2万人
「診療」に週40時間必要だとし、その必要医師数と現状の医師数(2004年)の差としている。
小笠原・伊藤・本郷・
金村・木村・溝口
(2008年)
5.7万人
医療法が定める医師数の基準から医師1人が1日に診察できる外来患者を6.7人とし、現状の医師数との差としている(指導や当直医師数も含む)。
日本経済研究センター
(2009年)
7.2万人
患者1000人当たり医師数が一番多い京都府の水準にすべての都道府県が達するための人数。

(出所)「都道府県別医師不足の長期見通し」(社団法人日本経済研究所)

医師不足数、不足率の推移
 
2006年
2016年
2025年
2030年
2035年
医師不足数(万人)
7.2
7.7
6.5
4.9
207
不 足 率( % )
30.7
29.5
22.6
16.2
8.4

(出所)日本経済研究所

5、医事過誤訴訟が増加

 医療機関は減収と医師・看護師不足を背景とした人件費増の中で、医療の充実が求められている。加えて、医療事故や医療過誤における訴訟は、医療の高度化・専門化とインフォームドコンセントやセカンドオピニオンなど患者側の権利意識も高まりと相俟って急増している。

 医療過誤訴訟は、1992年の371件から2004年には1,110件まで増加し、現在継続中の訴訟もピークの2,149件(2004年)から減少しているとはいえ、1,600件超と高水準である。 しかも、医療過誤があったとして、和解で終わるのが5割、判決に至るのが4割で、原告の取り下げ、その他で終了するのが1割ぐらいと言われています。和解においては、ほとんど100%に近くが、解決金名目などのお金を支払っているほか、判決まで至ったなかで、原告の主張を認容したのが判決総数の4割程度で、判決も含めてお金を支払っておしまいになっているケースが、全体の7~8割を占めることになる。つまり、医療過誤の場合、大半が有責に近い、あるいは有責だということでお金を支払っているのが実情です。

 

 

 過去の判例をみても分かるように損害賠償金額は高額で、今や病院経営の屋台骨を揺るがすものと言っても過言ではない。

高額賠償判例一覧一覧最新判例一覧(手術)最新判例一覧(投薬事故)最新判例一覧(歯科)

 

6、医療事故は刑事事件にも発展

 医療過誤訴訟は和解を含めても、氷山の一角である。
 しかも、「損害賠償を目的とした民事訴訟では、真相究明ができない」「過失を罰してほしい」などの被害者の声もあり、医師や病院が刑事告訴されるケースが近年増えている。

 医療事故の刑事訴訟は、1999年に横浜市大病院で2人の患者を取り違えて手術した事件と、都立広尾病院で誤って主婦に消毒液を点滴して死亡させ、ミスを隠そうとした事件などが契機となった。 
さらに、遺族の処罰感情などを背景に捜査機関が医師個人の責任を問うケースも急増しています。
代表例は、2002年には東京慈恵医科大付属青戸病院で、経験のない医師3人が難度の高い腹腔鏡下手術を行って患者を死亡させる事件です。

 医療関連の警察への届出は2000年(平成12年)の厚生省指導に従い、医療関係者からの届出が急増していますが、
被害関係者からの届出も減少しているわけではない。また、警察から検察への送致件数は、99年の14件から2000年は107件に急増、2004年には188件に達しています。その後、減少に向っているとはいえ、刑事事件の聖域とされていた医療の世界も、今や聖域ではなくなってきています。

 

医事事故関係届出等件数と立件送致数の推移
  1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
被害関係者等の届出等 7 9 13 33 17 42 39 43 30 21 43 32
医療関係者等の届出等 12 19 20 80 80 118 195 199 177 163 194 186
その他 2 3 8 11 8 25 16 13 7 6 9 8
届出総数 21 31 41 124 105 185 250 255 214 190 246 226
立件送致数 11 21 24 83 65 88 112 97 60 24 10 4
年別立件送致数 3 9 10 24 51 58 68 91 91 98 92 79
立件総数 14 30 34 107 116 146 180 188 151 122 102 83

(出所)警察庁
(注1)立件送致数とは、過年度に届出され、立件が該当年になったもの。
(注2)年別立件送致数とは、該当年に届出され、その年に立件送致されたもの。

7、医療機関も情報開示に前向き

 財団法人日本医療機能評価機構は、平成16年10月より医療事故の発生防止及び再発の予防を目的として医療事故情報収集等事業を開始しています。医療事故例の報告は年々増加の一途で、過去4年半で6000件を超えます。
病院の情報開示の進展は、裏を返せば、病院選択の大きな手段となると言えます。

医療事故事例の報告状況
報告義務対象医療機関
参加登録申請医療機関
合計医療機関
病院数
報告病院数
報告数
病院数
報告病院数
報告数
病院数
報告病院数
報告数
2005
272
176
1,114
283
56
151
555
232
1,265
2006
273
195
1,296
300
47
155
573
242
1,451
2007
273
193
1,226
285
49
179
558
242
1,405
2008
272
204
1,440
283
50
123
555
254
1,563
小計
 
768
5,076
 
202
608
 
970
5,684
2009年1月~6月
273
172
946
416
39
66
689
211
1,012
合計
 
940
6,022
 
241
674
 
1,181
6,696

(出所)財団法人日本医療機能評価機構

 2008年の「事故の概要」をみてみると、療養上の世話、治療措置の2項目で64.3%を占める。

 また、事故報告事例1563件の内訳を「事故の程度別」に見ると、
「死亡」が152件(9.7%)、「障害残存の可能性がある(高い)」が154件(9.9%)、「障害残存の可能性がある(低い)」が479件(30.6%)、「障害残存の可能性なし」456件(29.2%)、「障害なし」が249件(15.9%)、「不明」が73件(4.7%)だった。
 「発生要因(複数回答)」では、
「確認を怠った」414件(13.9%)、「判断を誤った」381件(12.8%)、「観察を怠った」380件(12.8%)が多く、次いで「連携が出来ていなかった」168件(5.7%)、「知識が不足していた」148件(5.0%)、「技術・手技が未熟だった」147件(5.0%)などと続いた。

 「医療事故に関連した診療科」については、
「その他」を除き、「整形外科」が11.3%で最多。以下は「内科」(9.0%)、「循環器内科」(6.7%)だった。
当事者については、「看護師」が47.6%で最も多く、「医師」(41.6%)がこれに続いている。
経験年数については、医師、看護師のいずれも「11-20年」が最も多く、それぞれ37.1%、18.6%だった。

 一方、「ヒヤリ・ハット事例」については、
「間違いが実施されたが、患者に影響がなかった」が61.1%。一方、「生命に影響し得る重大な間違いが実施される一歩手前の事例」が1.6%に当たる3475件あった。

 「発生した場面」については、「その他」を除き、「処方・与薬」が21.0%で最も多く、以下は「ドレーン・チューブ類の使用・管理」(14.3%)、「その他の療養生活の場面」(11.0%)と続いている。

 

8、これからの病院経営に求められるもの

 慰留期間を取り巻く環境は激変しており、医事紛争や訴訟が増加する一方で、平成19年4月施行の改正医療法では医療安全管理体制の強化、医薬品・医療機器の安全管理体制の確保が義務化され、一段と医療の質の向上のための「医療安全」への取り組みが不可欠になってきた。よって、これからの病院経営には「医療安全をはじめとしたリスクマネジメントの構築」が喫緊の課題として求められる。

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病院を取り巻く環境

1. 病院数は漸減傾向続く
2. 厳しい病院経営
3. 病院の倒産は今や珍しくない
4. 医師不足が広がる
5. 医事過誤訴訟が増加
6. 医療事故は刑事事件にも発展
7. 医療機関も情報開示に前向き
8. 病院経営に求められるもの

病院を取り巻くリスク

1. リスクの例
2. 病院が手配すべき保険
3. 保険を種類別に見る
4. 医療関連の損害賠償例

事業承継対策・相続

1. 出資持分評価額は高額になる
2. 高額な評価額から問題が発生
3. 医業承継のための事前準備
4. 医業承継対策は3つ

過労死水準の医療現場

1. 勤務医の労働時間は
2. 身も心も疲れている看護師
3. 過労死が増える。
4. 行政訴訟から民事訴訟へ
5. メンタルヘルス対策が急務